タレパンとは…タレットパンチプレスの略!板金を打ち抜く加工法の一種の特徴とメリットとは?
目次
- タレパンとは
- タレパン加工機の仕組み
- タレパン加工の特徴
- どちらも切断を担うタレパン加工とレーザー加工の比較
- タレパン加工法の一つ「ニブリング」
タレパンとは
タレパンとはタレットパンチプレスの略称であり、大きなタレパン加工機によって板金を目的の形状に打ち抜く加工法です。
タレパン加工機の仕組み
タレパン加工における最大の特徴のうちの1つは、1つの金型でプレスを行うのではなく、何十種類もの様々な金型を使い分けながら加工する点です。
タレパン加工機は何十種の金型を加工機内部に装備できるようになっているため、基本的に大掛かりな加工機になります。
タレパン加工機の内部はこのようになっており、それぞれの部位に異なる役割があります。
金型
タレパン加工機に収納されている何十種もの金型によって板金が打ち抜かれます。金型は大きく分けて、板金を挟んで上部にあるパンチ (写真右)と下部にあるダイ (写真左)の2種類に分類されます。
※クリアランス
パンチの刃とダイの穴は同じ形をしていますが、ダイの穴の方がわずかに大きくなっています。この差をクリアランスといいます。クリアランスが小さすぎるとダイの穴にパンチの刃が入り込まず、金型が破損してしまいます。一方クリアランスが大きすぎると穴をあける際のバリが多く出てしまい仕上げ時に影響が出てしまいます。
タレット
タレットがNC制御に応じて自動でタレパン加工機内を回転し、何十種もの金具の1つを装着してプレスを行います。板金を挟んで上側が上タレット、下側が下タレットと言います。
※NC制御
NCはNumerical Controlの略で数値制御とも言います。デジタル信号を用いて機械の動きを制御することで、人の手で行われていた機械の動作作業を自動化することができ、品質の安定を得ることができます。
ストライカー
プレス力をタレットに装着された金型に伝達する役割を果たします。高速で上下運動していて、金型を下に押し出します。
リフター
プレスをした後に、金型を上方向へ持ち上げる役割を果たします。
ダイホルダー
金型のうち、板金を挟んで下側にあるダイを下タレットに横着する役割を果たします。
クランプ
板金(母材)を固定する役割を持ちます。NC制御によって自動的に板金をプレスされる箇所へ移動させます。
タレパン加工機によって板金に穴を開ける仕組みは、連続的に直線もしくは曲線状にプレスを行うことによって大きな板から抜き出すというものです。一度の作業で抜くのではなく、何度も細かくプレスしながら進めていくために高い精度を保つことができます。連続的に行われるプレス作業は、NC制御によって自動で行われます。
タレパン加工の特徴
タレパン加工は薄板が得意?
タレパン加工は基本的に薄板に適用される加工法です。板厚が0.2mm未満の非常に薄いものまで加工することが可能です。
一方で、厚板の加工にはあまり向いていません。熱などを用いるのではなく、単純なプレス加工を連続的に行うのがタレパン加工であり、板厚が約3.2mmを超えてくるような比較的厚い厚板の打ち抜き加工が困難であることが欠点でもあります。
タレパン加工と同様に、板金の打ち抜きや穴あけに用いられている加工法がレーザー加工になります。
タレパン加工は厚板の加工が困難であるのに対し、レーザー加工では高出力のレーザー光を用いれば、板厚が比較的厚い板金でも加工することが可能です。
タレパン加工の精度
タレパン加工は、基本的に専用の金型を必要とせず、角型・丸型・異型などの多様な金型を用いることによって複雑な形状に板金を打ち抜きます。
タレパン加工では、多様な金型をNC制御と呼ばれる数値制御によって自動で使い分けながら加工を行うため、比較的高い精度で加工を行うことができます。
タレパンに必要なメンテナンス
多種類の金型を使用するタレパン加工では、金型の状態が加工の精度に影響を及ぼすので、銅などの柔らかい材料の加工時にはバリが発生しやすく、そのバリによって金型の歪みが早くなることもあります。そのため使用する金型の管理・維持が非常に大切になります。定期的に金型を研磨することで、精度を保つことが重要です。
しかし、タレパン自体は日常的に注油と清掃が必要ですがメンテナンスは数年に1度ほど行えばよいので、比較的楽といえます。
大量生産・多品種少量生産、どちらもできる!
NC制御に加え、自動取出し機と自動供給装置を用いれば、24時間稼働可能です。またプログラミングによって動きが制御されているため、1人で複数のタレパンを稼働させることができ、遠隔からの監視が必要なだけなので、コストも抑えることができます。
また後述するニブリングにより、異形でも特別な金型を用いることなく生産できます。熱などを用いていない分幅広い材質の加工が可能なため、多品種の加工も可能です。
どちらも切断を担うタレパン加工とレーザー加工の比較
タレパン加工と同じく、板金を指定の形に抜く加工法としてレーザー加工があります。
タレパン加工とレーザー加工の大きな違いは、まず加工の原理の違いにあります。タレパン加工は説明したように連続的なプレス作業によって加工するのに対し、レーザー加工はレーザー光を照射しながら熱によって母材を溶かし、切断したい方向に進行することによって切断します。そのため、直線的な切断であればレーザー加工の方がタレパン加工よりも加工速度が速くなります。複雑な形の場合でも直線距離が長い場合はレーザー加工の方が速いですが、穴あけが必要な製品の場合はタレパン加工の方が適しているといえます。タレパン加工のほうが穴あけ加工における真円度がレーザーカットよりも安定します。
また、タレパン加工では厚板の加工は困難ですが、レーザー加工では高出力のレーザー光を用いれば加工できます。さらに、ビーム品質の高さに定評のあるファイバーレーザーを用いたレーザー溶接は、薄板の加工を得意としています。
タレパン加工とレーザーカットの違いは切断面にも表れます。タレパン加工ではプレス時のクリアランス値によってバリの大きさが変化するのに対し、レーザーカットではレーザーの条件や金属材質によってドロス(溶融後の付着物)の大きさが変化します。
コストに関しては、どちらも大掛かりな機械を用いるため機械のコストは比較的大きく、作業コストに関してはタレパン加工の方が金型による打ち抜きのみであるため安価といえます。一方で、レーザー加工の場合は大量の電力を要するため作業コストは高くなります。ただし、先にも述べたように、これらは切り抜く形状によって左右されます。
そこで、タレパン加工とレーザー加工を組み合わせた複合機が普及しています。作業コストを抑えることができるタレパン加工機の利点と複雑な形状の加工に対応することができるレーザー加工の利点を組み合わせたものになり、費用対効果が高い加工法になります。
穴やタップなどの成形加工をタレパン加工で複雑な切り抜きや外周の切断をレーザー加工で行うことによって、レーザータレパン複合機1台で製品の加工を一貫して行うことができます。レーザータレパン複合機は、高精度でありながら作業時間を短縮することのできる、非常に優れた加工機であるといえます。
これら3種の加工法の特徴は以下のようにまとめることができます。タレパン加工とレーザー加工にはそれぞれに利点があり、両方の利点を合わせたものがレーザータレパン複合機になります。
タレパン加工 | レーザーカット | レーザータレパン複合機 | |
---|---|---|---|
精度 | ◎ | 〇 | ◎ |
板厚 | ◎ | ◎ | ◎ |
異形穴 | 〇 | ◎ | ◎ |
コスト | 〇 | 〇 | ◎ |
タレパン加工法の一つ「ニブリング」
レーザータレパン複合機ならば複雑な形状も1台で加工することが可能ですが、そうでない場合複雑な形状には専用の金型を製作して用意するかレーザー加工を用いることになります。しかし、金型を用意したりレーザー加工を用いたりするとコストが上がるとともに少量生産には適さなくなってしまします。また、材質が銅の製品を加工する際はレーザー加工を用いることができないためタレパン加工を用いる必要があります。
そこで用いられるのが、ニブリングというタレパン加工法です。ニブリングは別名「追い抜き加工」とも呼ばれ、打ち抜いた穴が重なるように少しずつ位置をずらしながら、非常に細かくプレスを行う加工の仕方です。
ニブリングによって、金型のない異形状の穴や抜きの加工も既存の金型をもちいて行うことが可能であり、コストダウンと加工時間の短縮をもたらすことができます。
銅製品で異形穴がある場合にはタレパン加工によるニブリングが頻繁に使用されます。
ただし、ニブリングを行なった場合は切断面に傷や付着物が目立ちます。そのため、ニブリング後には切断面の仕上げ処理が必要になるという手間がかかってしまいます。