合金鋼の基本事項|定義やその種類について
性能の高い鉄鋼材料である合金鋼とは
鉄鋼材料は下図に示しているように合金鋼・炭素鋼・鋳鉄の3種類に分けられます。
炭素量が2.1%以上の炭素量が非常に多く硬いものと鋳鉄といいます。
純度の非常に高い純鉄は柔らかすぎて実用に耐えないため、普通炭素などの鉄以外の成分を加えることになります。
なかでも代表的なのは炭素(C)・シリコン(Si)・マンガン(Mn)・リン(P)・硫黄(S)のことを総称して5大元素と呼び、鉄と5元素のみからなる材料を炭素鋼、さらに他の金属を加えたものが合金鋼です。
加える元素には、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、コバルト(Co)などがあり、強度や耐摩耗性、耐熱性、焼入れ性などの向上が期待できます。
合金鋼は添加している元素が多く、性質もよいですが、そのぶん高価で、形状や寸法のバリエーションも炭素鋼よりも少なくなっています。
そのため、材料選定の時にはまず炭素鋼を検討し、性質上炭素鋼では仕様を満たせない場合に合金鋼を検討するというステップを踏みます。
合金鋼の種類
以下では特によく使われる合金についてざっくりと解説します。
ステンレス鋼(SUS材)
台所の流しなど、合金鋼の中で最も身近に使われている材料です。
英語で書くとStainlessと綴ります。つまり、Stain(汚れ)がless(少ない)という意味で、汚れにくい、錆びにくいということを意味しています。
5大元素に加え、クロム(Cr)とニッケル(Ni)が含まれています。
ステンレスが錆びないのは、このクロムの緻密な不動態皮膜(酸化皮膜)が表面を覆い、内部を保護するためです。
メッキと違い、もし表面に傷がついても酸化皮膜は作り直されるため、長期間錆びから内部を守ってくれます。
また、酸化皮膜は透明で百万分の1ミリ程度なので、見た目がほぼ変わらないのもステンレスの魅力です。
合金工具鋼鋼材と高速度工具鋼鋼材(SK*材)
硬さと耐摩耗性が必要で炭素鋼のSK材が使えない時はこの合金の工具鋼のSKS材・SKD材・SKT材を選定します。
クロム(Cr)、タングステン(W)、バナジウム(V)などを添加することで、耐熱性、耐摩耗性、焼入れ性などが向上しています。
工具に使うほどに硬いため、加工性はよくありません。
超硬合金
名前が示す通り、非常に硬い材料です。
ロックウェル硬さで90程度、HRCで68以上、たて弾性係数は鉄鋼材の3倍程度です。
炭化タングステン(WC)、コバルト(Co)、炭化チタン(TiC)などの金属炭化物の粉末を型に入れて焼結して作ります。
耐摩耗性が非常に優れ、高温でも高度が下がらないため、工具に用いられます。
ハイテン鋼(高張力鋼)
炭素鋼などに比べ、はるかに高い引張り強さをもっています。
SS400が400N/mm^2なのに対し、ハイテンは2倍以上の800~1000N/mm^2程度の数値です。
高炭素鋼にシリコン(Si)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)などを添加しています。
自動車のボディなどに用いられており、強いので薄くてすみ、重量が下がるため、燃費の削減に貢献しています。