粉体塗装とは?粉体塗装のメリットと特徴を紹介
生活の中で最も身近で、一度は聞いたとこのあるであろう加工法は塗装ではないでしょうか?
今回は、塗装の中でも特異な性質を持っている粉体塗装の特徴やメリットについて紹介していきます。
目次
- 粉体塗装とは、100%粉末状の塗料を使用する塗装方法
- 粉体塗装の特徴は、有機溶剤を使用しない環境に良い塗装方法でコストパフォーマンスが良い
- 粉体塗装の種類は大きく分けて2種類ある
- 粉体塗装のメリット
- 粉体塗装のデメリット
- まとめ
これだけは知っておきたい粉体塗装のポイント
- 経済的に扱いやすく、環境にもいい
- 品質が高く、塗装の強度が強靭
- 繊細な作業が求められるため、短い納期には対応できない
粉体塗装とは
有機溶剤や水などの溶媒を用いておらず、顔料や樹脂、添加剤などを細かい粉体に砕き、100%粉末状の塗料を使用する塗装です。塗装方法としては、粉末状の塗料を被塗物に静電気を利用して付着させます。その塗料を高温で焼付乾燥を行い、塗装を行います。被塗装物の素材は金属類が主体であり、工業塗装方法として多岐にわたって利用されています。
そんな粉体塗装はどのような特徴があり、ほかの塗装方法とどんな違いがあるのでしょうか?また粉体塗装のメリットやデメリットについても特徴と合わせてみていきましょう。
粉体塗装の特徴
塗装方法の中でも特異な性質を持っている粉体塗装は、様々な特徴があります。それは塗料に使用する材料だけではなく、塗装方法や塗料の特性など多角的視点から見なければいけません。
品質が高い
粉体塗装による完成塗膜は、塗料に使用される高分子樹脂の特性により優れた塗膜強度、化学薬品性、耐食性、耐候性など塗装によってたくさんの効果を得ることができます。粉末状の塗料を使用することで、塗膜が厚く強度もかなり強くなっています。
また塗料に柔軟性があることにより高い耐久性も特徴の1つとしてあげることができます。塗膜の強度や柔軟性があることにより、被塗物が空気中にさらされることがなくなるので防錆性もとても高いです。
経済的に扱いやすい塗装
粉体塗装は塗料の回収再利用が可能となります。なぜ再利用が可能かというと、粉体塗装の塗料には有機溶剤が用いられていないため、塗料成分が揮発して変質することがないからです。そのためロスが少なくて済み、経済的にも優しい塗装方法となっています。
また塗膜の高い耐久性と防錆性により塗料を塗り直す必要がないため、コストパフォーマンスが高いといえるでしょう。
環境にいい
上記でも述べましたが、粉体塗装は有機溶剤を全く使用しないため、とても環境にいいのです。普通は溶剤塗装において顔料や樹脂を溶かすために有機溶剤が使用されるため発揮性有機化合物(Volatike Organic Compounds)が発生してしまいます。
しかし粉体塗装では有機溶剤が使用されていないので、光化学スモッグの原因にもなるVOCがほとんど発生しませず、人体や環境に優しい塗装方法といえます。
粉体塗装の種類
粉体塗装に使われる塗料はたくさんありますが、その中でも塗膜形成プロセスの違いから2種類に分類されます。その2種類にはどんな違いがあるかみていきましょう。
熱硬化性粉体塗料
熱硬化性粉体塗料の特徴としては、加熱することで架橋反応させて塗膜にします。一般的には塗料メーカーが提供しています。樹脂系の種類としては、エポキシ系、エポキシポリエステル系、ポリエステル系、フッ素樹脂系などがあります。
熱可塑性粉体塗料
熱可塑性粉体塗料の特徴としては、材料に付着した粉末塗料を220℃以上の温度で溶融後に冷却固化して塗膜にします。一般的には樹脂メーカーが提供しています。樹脂系の種類としては、塩化ビニル、ポリエチレン、ナイロンなどがあります。
粉体塗装のメリット
粉体塗装の特徴については先程紹介しましたが、特徴と合わせてメリットの紹介もしていこうと思います。
1回塗装、厚膜塗装が可能
粉体塗装は一回塗りで良く、さらに厚膜での塗装が可能です。これは何層にも分けて、薄く塗り重ねる塗装に比べて塗料の量が少なくて済むのでとても経済的な塗装法といえます。粉体塗装では有機溶剤を使わず、顔料や樹脂を粉状に砕いて塗料が構成されます。そして粉状の塗料をそのまま塗膜されるので、厚膜塗装になるのです。
塗装の質が強靭
粉末塗装では塗装の質がとても強靭です。それはなぜかというと、形成されている塗膜が厚く柔軟性を有しているからです。被塗物が温度変化などにより伸縮しても、柔軟性があるためひび割れしたり、剥がれたりするということを防ぐことができます。
ほかの塗装方法では被塗物が温度変化で伸縮する場合、ひび割れや剥がれに対応することができず、再塗装をしなければいけなくなります。
少量でもとても高い効果を発揮するのでコストパフォーマンスが高く、環境にもいいので活用される場面も多くなってきています。
VOCがほぼ0%
VOCとは揮発性有機化合物のことで、VOCは環境中へ放出されてしまうと光化学スモッグの原因ともなり、大気汚染につながってしまいます。またVOCは環境だけではなく、人間の健康にも害を及ぼすとされています。
その例として挙げられるのが「シックハウス症候群」です。空気中に放出されてしまったVOCを人間が吸い込んでしまうことによって、シックハウス症候群のような中毒症状を引き起こしてしまうのです。
公害や健康被害などはとても深刻な問題のため、しっかり配慮していく必要があります。
粉体塗装のデメリット
メリットと合わせて考えなければいけないのがデメリット。ほかの塗装方法や塗料と比べて、考えられるデメリットについて紹介していきたいと思います。
薄い膜厚には対応できない
メリットでは一度の塗装で厚膜塗装が可能な粉体塗装ということでしたが、逆に薄い膜での塗装は不可能です。対応できる厚みは決まっており、最小で30ミクロン程度となっています。それより薄い膜厚にすることはできませんので、ほかの塗装方法を検討しなければいけません。
色替えに時間が必要
粉体塗装は、細かい色調整の対応が求められます。そのため塗装完了までにとても時間がかかり、少量多品種に適していますが、大量生産には適してません。
工程としては、まず静電気を利用して被塗物に粉体を付着させ、高温で焼付乾燥を行い膜厚を形成させます。その後、粉体の密着性を向上させるために、粉体の噴き付けの前に油脂分を取り除く脱脂工程や錆を落とす酸洗工程など入念な前処理が行われます。この工程こそが繊細な仕上がりにつながるのです。
現場施工に不向き
繊細な作業が求められる粉体塗装は現場施工には不向きとなります。現場では埃や粉塵などが空気中に舞っており、塗装中に被塗物が汚れてしまいます。粉体塗装は粉末を被塗物に静電気を利用して付着させ、高温で焼付乾燥を行い膜厚を形成するだけではなく、粉体を吹き付ける前に前処理が必要になってきます。入念な前処理が求められるような繊細な塗装方法だからこそ、現場での施工には不向きなのです。
まとめ
今回は粉体塗装の特徴とメリットやデメリットを紹介していきました。塗装方法はたくさんの種類があり、用途や材料、使用場面によって使い分ける必要があります。粉体塗装は経済的で環境にもよく、品質が高いことが特徴に挙げられますがどんな場面でも使えるというわけではありません。
塗装方法はしっかり選定していく必要があります。実際の製作事例を見ると、具体的な処理後のイメージがわかるのでぜひ一度キャディ株式会社の製作事例をご覧ください。
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