黒皮(ミルスケール)とは?|鋼材表面で錆を防ぐ酸化皮膜の特徴や性質について
黒皮材とミガキ材
鉄を圧延する方法に熱間圧延と冷間圧延がありますが、これらではできた後の材料の表面の様子に大きな違いがあります。
ミルスケールと呼ばれることもある黒皮の正体は、約1000℃に加熱して圧延する熱間圧延の後に常温に冷える時にできる黒錆です。
指でなぞって凸凹が感じられるほどのものもあるので、見栄えを気にする場合や、寸法精度を必要とする場合は切削やブラスト加工によって表面を滑らかにする必要があります。
対して常温で圧延する冷間圧延の場合、表面が非常に滑らかなミガキ材になります。
表面をそのまま使用できるため、黒皮材に比べて高価ですが、黒皮材を調達し、表面を加工するよりは低いコストで済みます。
材料手配をする時には、「SS400 黒皮材」や「S45C ミガキ材」のように黒皮材なのかミガキ材なのかを指定します。
仮に「SS400」のように注文すると黒皮材とミガキ材のどちらが入荷するかわかりません。
ただし、SPCCのような冷間圧延鋼板の場合はミガキ材しかないので、指定の必要はありません。
H型鋼やI型鋼などの形鋼には黒皮材しかないため、それを利用することになります。
もし滑らかな面が必要な場合は切削加工して使う必要があります。
特徴・性質よく黒皮材は錆づらいと言われるように、黒皮は鋼材の表面を腐食から守ります。
鉄につく錆には赤錆と黒錆の2種類があります。
赤錆はFe2O3の化学式で、私たちが錆と聞いてイメージするあの赤いボロボロの錆です。
この錆は悪者で、鉄をどんどん腐食させ、朽ちさせていきます。
これに対して、黒錆はFe3O4と表される錆で、鉄の表面に酸化膜を作ります。
この錆は鉄の表面をコーティングするので、赤錆などから内部を守る良性の錆であり、黒皮の正体はこの黒錆です。
ただ、黒皮には小さな穴がたくさん空いているため、そこに錆が発生することもあり、防塵目的に黒皮を使うには少々心もとないと言わざるを得ず、黒皮を除去して使うことが多いです。
ただ、独特な風合いからインテリアとして使われるなど、黒皮をあえて除去せずにそのまま使うこともあります。
黒皮の除去の方法
黒皮は面に凹凸があるため、しばしば黒皮を除去して表面を滑らかにして使うことになります。
以下では代表的な黒皮除去の方法について解説します。
名称 | 概要 |
ブラスト処理 | 硬度のある研磨剤によって黒皮材表面を研磨することで黒皮を除去する方法です。 blastは「風」を意味しており、研磨剤の球を噴射し、黒皮を除去していきます。 細かい球を噴射するものをショットブラスト、尖った面を持つ研磨剤を噴射するものをグリットブラストと言います。 |
酸洗 | 硫酸や塩酸などの酸性溶液に黒皮材をつけておくことで黒皮を除去する方法です。 |