ステンレス(SUS)の曲げ加工の基礎知識
目次
- ステンレス・SUSの曲げ加工の特徴
- ステンレス・SUSの主な曲げ加工
- ステンレス・SUSの曲げ加工の対応板厚
ステンレス・SUSの曲げ加工の特徴
ステンレスは、アルミや銅、鉄と比べて硬い金属です。金属材質の硬さは、曲げ加工などの金型でプレスすることで行われる板金加工では多少の影響を与えます。
スプリングバック
具体的には、スプリングバックが他の材質に比べて大きくなります。スプリングバックとは、圧力を加えたパンチが板金から離れた後、金属のもつ性質である弾性力によって板金がわずかに戻る現象のことです。
ステンレスの曲げ加工をする際には、このスプリングバックに注意する必要があります。
また、ステンレスはその硬さゆえに曲げ加工に必要な加圧力が比較的大きくなります。曲げ加工に必要な加圧力は、以下の式によって算出することができます。
ステンレスの曲げ加工に必要な加圧力が大きい理由として、式中の引張応力という要素が挙げられます。引張応力とは、金属を加圧したときに金属内に生じる力のことをいいます。ステンレスは硬く、この引張応力が他の金属よりも高いため、より大きな加圧力が必要になるのです。
磁性の変化
ステンレスは、SUS304などのオーステナイト系の金属は磁性を持っていません。一方で、SUS410などのマルテンサイト系や、SUS430を代表とするフェライト系ステンレスには磁性があります。
しかし、SUS304などのオーステナイト系ステンレスも、曲げ加工をすると磁性を持つようになる場合があります。オーステナイト系ステンレスは、曲げ加工などにより力を加えられると組織がマルテンサイトに変わってしまうためです。
このようにして、一般的にSUS304を代表とするステンレスは磁性がないというイメージですが、曲げ加工をすると本来磁性を持たないはずのSUS304の製品が磁性を持つという場合があります。
ステンレス・SUSの主な曲げ加工
実際に曲げ加工には以下のような例がございます。
曲げ種類 | 概要 | イラスト |
V曲げ | V曲げはV型の金型(パンチ及びダイ)を用いた曲げ加工です。金型がV型であるため曲げrが比較的小さくなることが特徴的です。 V曲げは曲げ加工の中でも最も一般的な曲げ加工であると言えます。 ※90度曲げなどの度数指定の曲げも行っております。 | ![]() |
R曲げ | R曲げは、丸みを帯びる形で曲げる曲げ加工です。 R曲げで用いられるベンダーは丸みを帯びたものになります。 | ![]() |
ロール曲げ | ロール曲げは曲面状に加工する曲げ加工です。 ロール曲げは上記のV曲げ、R曲げとは少し毛色の異なる曲げ加工といえます。 ロール曲げは、板金をパイプ形状に加工する際などに用いられる曲げ加工です。 | ![]() |
Z曲げ | Z曲げ(段曲げ)は、その名の通りZ形状(階段状)に曲げる加工法です。Z曲げは金型を用いて1工程で曲げてしまう方法と、V曲げを2回用いることによって曲げる方法とがあります。 | ![]() |
ヘミング曲げ | ヘミング曲げは、縁部分を曲げる曲げ加工です。 ヘミング曲げは、製品の縁を取ることにより安全性が増すだけでなく、ヘミング曲げされた箇所が板厚2倍分の厚みになることによって強度も増すことができます。 | ![]() |
コの字曲げ | その名の通り、断面がコの字になる曲げ加工法です。 | |
コの字(傾斜)曲げ | コの字曲げに似ておりますが、この字曲げが曲げ角度90℃に近いのに対し、傾斜曲げはコの字のうちの一辺に傾斜がついている曲げ加工法です。 | |
ハット曲げ | ハット帽の断面のような形状の曲げ加工法です。 | |
Cチャン曲げ | 鋼材の1つ、C型チャンネルと似た形状の曲げ加工法です。 | |
箱曲げ | その名の通り、平板の4辺を曲げて箱型にする曲げ加工法です。 |
ステンレス・SUSの曲げ加工の対応板厚
ステンレスは比較的硬く、特殊な性質もある金属です。弊社のステンレス曲げ加工は、薄板から厚板まで、様々な板厚に対応しています。弊社はステンレスの曲げ加工を得意としておりSUS304やSUS430から、ヘアライン材や鏡面材などの特殊材まで、多岐にわたる種類のステンレスの加工ができます。また、曲げ加工も多くの金型を用い、様々な要望にお応えしています。
ステンレス(SUS)の板厚 | 曲げ加工 |
~ 0.7mm | ◎ |
0.8 ~ 1.0mm | ◎ |
1.1 ~ 1.5mm | ◎ |
1.6 ~ 3.2mm | ◎ |
3.3 ~ 6.0mm | ◎ |
6.1 ~ 9.0mm | 〇 |
9.1mm ~ | ー |